動画配信サービスを運営されている方にとって、視聴者が途中で動画視聴をあきらめてしまう状況は大きな課題です。とくに、通信環境の悪化による動画の停止や画質の低下は、視聴者離れの原因となります。

この記事では、通信環境に応じて最適な画質で動画を再生できる「アダプティブビットレート」の仕組みや固定ビットレートとの違い、メリット、注意点についてくわしく解説します。

アダプティブビットレート(可変ビットレート)とは

アダプティブビットレート(可変ビットレート)とは、視聴者のインターネット通信状況に合わせて動画の品質を自動的に変更する仕組みです。

通信速度が速い環境で視聴する際は高画質の動画を、通信速度が遅い環境では低画質な動画を配信することで、再生が途切れにくくなります。

従来の「固定ビットレート」配信では、一定の画質で動画を配信するため、通信状況が悪くなると動画が止まってしまう問題がありました。たとえば、電車での移動中に動画を視聴する場合、通信環境の変化によって再生が中断されるケースなどです。

アダプティブビットレートでは、通信環境が変化しても途切れることのない視聴体験を提供します。YouTubeやNetflixなどの主要な動画配信サービスでも採用され、現代のオンライン動画視聴に欠かせない技術の一つです。

ビットレートとは?

アダプティブビットレートの仕組み

アダプティブビットレートは、動画を数パターンの画質で用意し、視聴者の通信状況を監視しながら最適な画質を選択して配信します。

具体的には、まず動画を数秒単位の小さな部分(セグメント)に分割し、それぞれのセグメントを複数の画質で用意します。

再生中は通信速度を計測し、速度が低下した場合は次のセグメントから自動的に低画質版に切り替えることが可能です。

この仕組みを実現するために「HLS(HTTP Live Streaming)」などの特殊な配信方式を使用します。HLSの詳細は、以下の記事をご覧ください。

ビットレートの異なる複数の動画の準備

先ほど触れたように、動画配信では、視聴者のさまざまな通信環境に対応するため、同じ動画を異なる画質で複数用意することが重要です。

一般的に3〜5種類の画質を用意します。たとえば、モバイル通信向けの低画質では500Kbps、一般的な家庭用Wi-Fi向けの標準画質では1Mbps、光回線向けの高画質では2Mbpsといった設定にします。

これらの動画は、最高画質の元動画から「変換(トランスコード)処理」で作成することが可能です。トランスコード処理では、動画の大きさと画質を調整し、それぞれの通信速度に適したファイルサイズに変換します。

さまざまな画質の動画を用意することで、視聴者は自分の通信環境に合った最適な画質で動画を楽しめるでしょう。

ストリーミング配信

ストリーミング配信は、動画を最後まで一括ダウンロードする必要がありません。動画を数秒ごとの小さな部分(セグメント)に分割し、再生に必要な部分だけを順番に配信します。

視聴者の通信状況は常に変化するため、セグメントが切り替わるタイミングで、その時点での最適な画質のファイルを選択していきます。

たとえば、電車でトンネルに入って通信速度が遅くなった場合、次のセグメントから自動的に低画質版に切り替えることで、途切れることなく再生を続けられるのです。

アダプティブビットレートを採用するメリット

アダプティブビットレート採用のメリットは、配信者と視聴者のどちらにもあります。
配信者側にとっては、視聴者の離脱を防いで動画の視聴完了率を高められることです。通信環境が悪い状況でも動画が途切れにくいため、視聴者に最後まで内容を楽しんでもらえます。

また、スマートフォンからパソコン、テレビまで、さまざまな視聴環境に対応できるため、より多くの人に動画を届けることが可能です。

視聴者の通信量を必要以上に使用せず、また、モバイル通信での視聴も再生が途切れることなく快適におこなえるため、ユーザー満足度の向上にもつながるでしょう。

アダプティブビットレートのデメリット・注意点

アダプティブビットレートを実装する際には、いくつかのデメリットや注意点があります。
もっとも大きな課題は、複数の画質の動画を保存するためのストレージコストです。たとえば、1時間の動画を3種類の画質で用意すると、必要なストレージ容量は通常の3倍になります。

さらに、動画の変換には高い処理能力が求められ、サーバーへの負荷も増加します。
技術面では、動画の分割方法や画質の切り替えタイミングの設定に専門的な知識が必要です。切り替えが頻繁すぎると視聴体験が損なわれ、逆に遅すぎると通信環境の変化に対応できません。

こうした課題に対しては、クラウドサービスやCDN(コンテンツ配信ネットワーク)を利用することで、専門的な知識がなくても効率的に運用できる方法があります。

とくにHLS(HTTP Live Streaming)などのプロトコルを活用したマネージドサービスを利用することで、手軽にアダプティブビットレートを実装できます。

ライブ配信ならImageFlux Live Streaming

ライブ配信システムの構築や運用にはスキル・知識が求められますが、さくらインターネットが提供するImageFlux Live Streamingを利用することで解決できます。

ImageFlux Live Streamingは、APIやSDKを使って独自のライブ配信システムを手軽に構築できるマネージドサービスです。HLSとWebRTCの両方に対応しており、大規模配信から低遅延のリアルタイム通信まで、多岐にわたる用途に対応します。

HLS配信では、視聴者の通信環境に合わせて最適な画質に自動変換する機能を備えており、アダプティブビットレートによる安定した配信を実現します。

ストリーミングサーバーの構築や運用はすべてサービス側でおこなうため、急なアクセス増加にも自動的に対応し、運用コストの削減にもつながります。

まとめ

アダプティブビットレートは、視聴者の通信環境に応じて動画品質を自動調整する技術で、現代のストリーミング配信には欠かせません。

しかし、その実装には複数画質の動画準備やサーバー運用など、技術的な課題があります。
ImageFlux Live Streamingを利用することで、こうした課題を解決し、安定した品質のライブ配信を手軽に実現することが可能です。

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構成・執筆・編集

ImageFluxチーム

さくらインターネットとピクシブで共同開発・提供している、クラウド画像変換サービス・ライブ配信エンジンサービス「ImageFlux」のチームです。

2025年2月27日公開

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