ビットレートは、動画の画質に大きく影響するため、動画制作や配信の際には重要な設定項目の1つです。
本記事では、ビットレートの意味や種類、適切な設定方法などについてくわしく解説します。動画制作や配信に携わる方はもちろん、動画の品質に興味がある方はぜひ参考にしてください。
適切なビットレートの設定により、高品質でありながらも視聴しやすい動画を提供することができます。

ビットレートとは

ビットレートとは、単位時間あたりに転送または処理されるビット数のことを指します。動画配信においては、1秒間に転送できるデータ量を表す指標となります。
ビットレートの単位は通常、ビット毎秒(bps/bit per second)が用いられ、キロ(k)、メガ(M)、ギガ(G)などの接頭辞と組み合わせて表現されます。たとえば、1Mbpsは1秒間に100万ビットのデータを転送できることを意味します。

動画のビットレートは、音声ビットレートと映像ビットレートに分けられます。音声ビットレートは音声データに、映像ビットレートは映像データに割り当てられるデータ量を表します。
この2つを合わせたものが動画全体の総ビットレートとなります。一般的に、映像ビットレートは音声ビットレートよりも大きな値を占めます。動画配信では、この総合的なビットレートを適切に設定することが重要です。

音声ビットレート

音声ビットレートは、動画ファイル内の音声データに割り当てられる1秒あたりのデータ量を表します。音声ビットレートが高いほど、より高音質な音声を再生できます。一方、音声ビットレートが低いと音質が劣化し、ノイズが目立つようになります。

音声ビットレートの設定には、音声のサンプリングレート(1秒間に音声信号を何回サンプリングするか)と、ビット深度(1サンプルあたりのデータ量)、チャンネル数が関係します。これらの値を掛け合わせたものが音声ビットレートとなります。

たとえば、サンプリングレートが44.1kHz、ビット深度が16bitのステレオ音声(2)の場合、音声ビットレートは「44100×16×2=1411.2kbps」となります。

インターネット上の動画配信では、音声ビットレートは128kbps前後に設定されることが多いです。高音質を重視する場合は、192kbps以上に設定するのも1つの選択肢です。

ただし、音声ビットレートを上げすぎるとファイルサイズが大きくなるため、全体のバランスを考えて適切な値を選ぶ必要があります。

映像ビットレート

映像ビットレートは、動画ファイル内の映像データに割り当てられる1秒あたりのデータ量を表します。映像ビットレートが高いほど、より高画質で精細な映像を再生できます。逆に、映像ビットレートが低いと画質が粗くなり、ブロックノイズや圧縮アーティファクトが目立つようになります。

映像ビットレートの設定には、解像度(画面サイズ)とフレームレートが関係します。フレームレートは、1秒間に表示する静止画(フレーム)の数のことで、単位はfps(frames per second)で表されます。たとえば、30fpsの動画は、1秒間に30枚の静止画で構成されているということです。

フルHD解像度(1920×1080ピクセル)で30fpsの映像を配信する場合、6Mbps程度の映像ビットレートが必要とされます。4K解像度(3840×2160ピクセル)の場合は、同じ30fpsでも25Mbps~70Mbpsが目安といえます。

ただし、これらのビットレート値はあくまで目安であり、映像の内容によって最適なビットレートは異なります。動きの少ない映像であれば、同じ解像度でもより低いビットレートで配信できる一方、スポーツ中継など動きの激しい映像の場合は、より高いビットレートが必要になるでしょう。

高ビットレートのメリット・デメリット

動画のビットレートを高く設定すれば、より高画質・高音質な映像を配信できます。しかし、ビットレートを際限なく上げればよいというわけではありません。むやみにビットレートを高くすると、さまざまな問題が生じる可能性があるのです。

まず、ビットレートを上げるとファイルサイズが大きくなり、動画データが重くなります。視聴者のインターネット回線速度によっては、再生が途切れたり、読み込みに時間がかかったりするなど、スムーズに視聴できなくなる恐れがあります。とくに、モバイルデータ通信を利用している視聴者にとっては、高ビットレートの動画は通信料の面でも負担となるでしょう。

また、動画配信サービスを提供する側にとっても、高ビットレートの動画はサーバーの負荷を高め、多くの帯域を占有するため、コスト面でのデメリットがあります。
1人の視聴者に高画質の動画を配信するために、他の視聴者へのサービス品質を犠牲にしてしまっては本末転倒です。

したがって動画のビットレートは、できるだけ高画質・高音質でありながらも、実際の配信環境に基づく適切なビットレートの選定で、多くの視聴者が快適に視聴できるレベルに設定することが肝要です。つまりビットレートの最適値を見極めることが、動画配信に携わる者の重要な役割となるのです。

高ビットレートのメリット

高ビットレートで動画を配信するメリットには、以下のような点があります。

  • 高解像度・高フレームレートの映像を、より高画質に配信できる
  • 動きの速い映像でもブロックノイズやその他の圧縮アーティファクトが少なく、滑らかに再生できる
  • 映像や音声の細部までクリアに表現できるため、視聴者により強い臨場感を与えられる
  • プロフェッショナルな印象を与え、動画制作者や配信者の信頼性を高められる

とくに、映画やドラマ、スポーツ中継、自然ドキュメンタリーなど、映像の質が重視されるコンテンツにおいては、高ビットレートでの配信が効果的です。視聴者に感動を与え、強い印象を残すことができるでしょう。また、有料の動画配信サービスにおいては、高ビットレートによる高品質な映像が、サービスの付加価値を高める要因にもなります。

ただし、これらのメリットを享受するためには、視聴者側にも十分な通信環境とデバイススペックが求められます。高ビットレートの動画を快適に再生するには、高速なインターネット回線と、高性能なCPU・GPUを搭載した再生デバイスが必要不可欠なのです。

高ビットレートのデメリット

高ビットレートの動画配信には、以下のようなデメリットが存在します。

  • ファイルサイズが大きくなるため、視聴者のダウンロードに時間がかかる
  • 回線速度が遅い環境では、再生が途切れたり、読み込みに時間がかかったりする
  • モバイルデータ通信での視聴では、通信料が高額になる可能性がある
  • 動画共有サイトでは、アップロードに時間がかかったり、容量制限に引っかかったりする
  • サーバーへの負荷が高くなるため、帯域使用料など配信コストが増大する
  • 多数のユーザーが同時に視聴した場合、サーバーが高負荷になり配信が不安定になりやすい

つまり、高ビットレートの動画は、視聴者と配信者の双方にとって、時間とコストの面でのリスクが伴うのです。すべての視聴者が高速なインターネット環境を享受しているわけではありません。データ通信料を気にせざるを得ない人もいます。

また、動画配信サービスを運営する側は、高ビットレートによるサーバーコストの増大を吸収する必要があります。投資に見合った収益が得られなければ、サービスの継続が困難になるでしょう。

したがって、動画のビットレートは、配信対象とする視聴者層のインターネット環境や、配信サービスの採算性などを総合的に勘案して、適切に設定する必要があるのです。

動画の適切なビットレートの設定方法

前章で解説したように、動画のビットレートは、高ければ高いほどよいわけではありません。配信する動画の内容や、視聴者の環境、配信サービスの特性などを考慮し、適切なビットレートを設定することが重要です。

では、具体的にどのように設定すればよいのでしょうか。ここでは、フレームレート、解像度、コーデックの3つの観点から、動画の適切なビットレート設定の指針をお伝えします。

フレームレートを適切に設定する

先に述べたとおり、フレームレートは1秒間に表示する静止画(フレーム)の数のことで、単位はfps(frames per second)で表されます。

一般的に、フレームレートが高いほど、動きがスムーズに見えます。とくに、スポーツ中継やアクションシーンなど、動きの速い映像では、60fpsといった高フレームレートが求められます。一方、ニュースや講演など、動きの少ない映像では、30fpsや24fpsでも十分でしょう。

ただし、フレームレートを上げるとデータ量が増えるため、その分ビットレートも高く設定する必要があります。たとえば、同じ解像度の映像で、60fpsと30fpsを比べた場合、60fpsではビットレートを2倍に設定しなければ、画質が落ちてしまいます。

したがってフレームレートは、動画の内容に応じて必要十分な値に設定し、それに見合ったビットレートを割り当てることが肝要です。動きの速い映像には高フレームレート・高ビットレートを、動きの遅い映像には低フレームレート・低ビットレートを、という具合に最適化するのです。

解像度を適切に設定する

解像度は、映像の縦と横のピクセル数で表されます。たとえば、フルHDの解像度は「1920×1080」ピクセル、4K解像度は「3840×2160」ピクセルです。解像度が高いほど、より精細で大画面に適した映像となります。

動画配信の解像度は、視聴者のデバイスや視聴環境に合わせて設定するのが基本です。スマートフォンでの視聴がメインなら、HD(720p)程度の解像度で十分でしょう。一方、大画面テレビでの視聴を想定するなら、フルHD(1080p)や4Kといった高解像度が求められます。

ただし、解像度を上げるとデータ量が増えるため、ビットレートも高く設定する必要があります。たとえば、同じフレームレートの映像で、フルHDと4Kを比べた場合、4Kではビットレートを4倍程度に設定しなければ、画質が落ちてしまいます。

したがって、解像度は視聴者の環境に応じて必要十分な値に設定し、それに見合ったビットレートを割り当てることが重要です。スマートフォン向けには低解像度・低ビットレートを、大画面テレビ向けには高解像度・高ビットレートを、という具合に最適化するのです。

適切なコーデックを選択する

コーデックは、動画データを圧縮・伸長するアルゴリズムのことです。適切なコーデックを選択することで、同じビットレートでもより高画質な映像を配信できます。

現在、動画配信で広く使われているコーデックには、「H.264/AVC」「H.265/HEVC」「VP9」などがあります。YouTubeでは、H.264とVP9が使われています。これらのコーデックは、高い圧縮効率と画質を両立することができます。

たとえば、H.265は、H.264と比べて同じ画質を半分程度のビットレートで実現できるとされています。つまり、H.265を使えば、同じ画質の映像をより低いビットレートで配信できるわけです。

ただし、新しいコーデックほど、再生デバイス側の対応が必要となります。H.264は幅広いデバイスで再生できますが、H.265やVP9は、比較的新しいデバイスでないと再生できない場合があります。

したがってコーデックは、配信する動画の解像度やフレームレートに加え、視聴者のデバイスの対応状況も考慮して選択する必要があります。可能な限り新しく高効率なコーデックを採用しつつ、多くの視聴者に再生してもらえるよう、旧世代のコーデックとの互換性も確保するのが賢明でしょう。

たとえば、高解像度・高フレームレートの映像は、H.265やVP9といった高効率のコーデックで配信し、同時にH.264版も用意する、といった方法が考えられます。視聴者のデバイスに応じて、最適なコーデックの映像を自動的に選択して配信する「アダプティブビットレート・ストリーミング」の仕組みを活用するのも有効です。

動画配信のビットレート目安

ビットレートの設定は、動画の品質とファイルサイズに大きく影響します。動きの多い動画では、より高いビットレートが必要ですが、動きの少ない動画ではそれほど高くなくても十分です。
動きの多さに応じたビットレートの目安は、以下になります。

解像度 動きの少ない動画 動きの多い動画
フルHD (1920x1080) 約10~13Mbps 約13~15Mbps
720p (1280x720) 約2~5Mbps 約5~6Mbps

※フレームレート30fps想定での数値となります。

ビットレートの適正値は、動画の内容、解像度、フレームレート、使用するコーデックによって異なります。また、アップロード先のプラットフォームの要件にも注意する必要があります。適切なビットレートを設定することで、高品質な動画を効率的なファイルサイズで提供できるのです。

まとめ

本記事では、ビットレートの基礎知識から、動画配信における適切なビットレートの設定方法までをくわしく解説しました。ビットレートは、動画の画質や音質に直結する重要な要素ですが、高ければ高いほどよいわけではありません。

動画の内容や視聴者の環境、配信サービスの特性などを総合的に考慮し、必要十分なビットレートを見極めることが重要です。
フレームレートや解像度は、動画の内容に応じて適切に設定し、それに見合ったビットレートを割り当てましょう。また、高効率なコーデックを活用することで、より低いビットレートでも高画質な動画配信が可能になります。

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構成・執筆・編集

ImageFluxチーム

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2024年8月29日公開

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