ストリーミングサーバーとは?Webサーバーとの違いやおもなプロトコル・サーバー導入の課題を解説
近年、動画配信の普及に伴い、「ストリーミングサーバー」という言葉をよく耳にするようになりました。しかし、その仕組みや役割についてはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ストリーミングサーバーの基本的な概念から、Webサーバーとの違い、そして導入の課題や解決策を分かりやすく解説します。
ストリーミングサーバーとは
Webサイトで動画や音声を配信するには、ストリーミングサーバーとWebサーバーの2種類のサーバーが使用されます。
一般的なサーバー構成の簡略図
ストリーミングサーバーは、大容量の動画や音声ファイルなど、時間軸を持つコンテンツの配信に適しています。コンテンツの時間軸を細かく制御し、利用者のネットワーク状態に応じて送信データ量を調整しながら動的にコンテンツを配信できるのです。そのため、ユーザーは遅延の少ないストリーミング体験ができ、ライブイベントや高解像度の動画視聴に適しています。そのほかに、ストリーミングサーバーには以下のような特徴があります。
- 即時再生: 動画ファイルをダウンロードしながら同時に再生できるため、再生開始が迅速です。
- データ速度の最適化: ユーザーのインターネット接続状況に応じて最適な帯域幅を提供し、遅延を最小限に抑えます。
- セキュリティの強化: ファイルがPCのキャッシュに残らず、保存もできないため、機密情報のセキュリティが保たれます。
Webサーバーは、文章や静止画といった軽量コンテンツの効率的な配信に最適です。静止画やテキストファイルをシンプルに順番で配信する方法を採用しています。そのほかにWebサーバーには以下のような特徴があります。
- 完全ダウンロード後の再生: 動画ファイルが完全にダウンロードされてから再生が可能です。
- データ速度の制限: 最適なデータ速度の選択肢が限定されます。
- ファイル保存が可能: ダウンロードしたファイルはPCのキャッシュに保存され、アクセスが容易です。
ストリーミング配信の種類
ストリーミング配信には、おもに2つの方式があります。
ライブ配信
リアルタイムで撮影した映像をそのまま配信する方式です。スポーツ中継やライブイベント、テレビ会議などに適しています。ライブ配信では、多数の視聴者が同時にアクセスするため、高性能なサーバーが必要です。ストリーミングサーバーは通信速度を最適化し、遅延を最小限に抑えながら高品質な映像をリアルタイムで提供します。
オンデマンド配信
あらかじめ用意された動画コンテンツをユーザーの要求に応じて配信する方式です。オンデマンド配信では、ユーザーが任意の時間にコンテンツを選んで視聴できるため、映画やドラマの配信などに利用されています。
それぞれの違いや特徴は、以下の記事でくわしく解説しております。
ストリーミング技術を支えるプロトコル
ストリーミング技術を支えるプロトコルには、おもに以下のものがあります。
- HLS
- RTMP
- MPEG-DASH
- WebRTC
それぞれ異なる特徴と強みを持ち、さまざまなストリーミングニーズに対応しています。
HLS(HTTP Live Streaming)
HLSは、Apple社が開発した広く使用されている動画ストリーミングプロトコルです。HTTPを利用して動画を小さなセグメントに分割して配信するため、ほとんどのサーバーで実行でき、多くのデバイスでサポートされています。HLSのおもな特徴は、アダプティブビットレートストリーミングに対応していることで、ネットワーク状況に応じて動的に動画品質を調整できます。
HLSはライブ配信とオンデマンド配信の両方に使用することができます。また、HTTPSを使用することでデータの暗号化と安全な通信を実現できます。
RTMP(Real Time Messaging Protocol)
RTMPは、Adobe Systems社が開発したプロトコルです。TCPベースのプロトコルで、クライアントとサーバー間で持続的な接続を維持します。
RTMPは多くのストリーミングプラットフォームやエンコーダーでサポートされているため、幅広い用途で利用可能です。ただし、最近ではHTTPベースのプロトコルに比べて普及度が低下しつつあります。
MPEG-DASH(Moving Pictures Experts Group Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)
MPEG-DASHは、国際標準化機構(ISO)によって標準化された技術で、HLSと同様にアダプティブビットレートストリーミングをサポートしています。HLSと同様に、HTTPを使用して動画を小さなセグメントに分割して配信します。おもな特徴は、さまざまな形式の動画コンテンツに対応していることと、デバイスやプラットフォームに依存しない点です。MPEG-DASHを使用することで、ユーザーはネットワーク状況に応じて品質が調整されるストリーミングを体験でき、ライブストリーミングとオンデマンド配信の両方に対応しています。
WebRTC
WebRTCは、ブラウザ間でリアルタイムの通信を可能にするオープンソースのプロトコルです。おもな特徴は、ブラウザ上で直接ピアツーピア通信ができることと、0.5秒程度の非常に低遅延でのデータ転送が可能なことです。
WebRTCは、ビデオ会議、ライブチャット、オンラインゲームなど、リアルタイム性が極めて重要なアプリケーションに適しており、追加のプラグインやソフトウェアのインストールが不要です。ただし、大規模な配信には向いていないため、用途に応じてほかのプロトコルと組み合わせて使用されることもあります。
ストリーミングサーバーを導入・運用する際の課題
ストリーミングサーバーの導入・運用には、以下のような課題があります。
- 初期投資に高額なコストがかかる
- 専門的な知識と技術が必要
- 継続的なメンテナンスが必要
上記の課題は、とくに専門知識を持つ人材が不足している組織にとって大きな障壁となる可能性があります。
初期投資にコストがかかる
ストリーミングサーバーの導入には、高性能なサーバー機器の購入費用、専門業者によるセットアップ費用、ストリーミングソフトウェアのライセンス料といった複数の初期費用コストが発生します。高品質なライブ配信を実現するための高性能サーバーは高額であり、大規模な配信や高画質のストリーミングをおこなう場合、コストはさらに増大します。冗長性を確保するためのバックアップシステムの導入も含め、初期投資額は容易に数百万円を超えることがあります。
専門的な知識と技術が必要
ストリーミングサーバーの構築と運用には、サーバーのセットアップ、ネットワーク設定、ストリーミングプロトコルの最適化など、高度な技術的知識が必要です。とくに、トラブルシューティングや性能調整には、豊富な知識と経験が不可欠です。しかし、これらの専門知識を持つ人材は不足しており、適任者を確保することは一般的に困難といえるでしょう。既存のIT部門でも、これらのスキルを習得するには時間とリソースが必要とされます。
継続的にメンテナンスが必要
ストリーミングサーバーは、導入後も継続的なメンテナンスが必要です。定期的なソフトウェアのアップデート、セキュリティパッチの適用、パフォーマンスの最適化など、適切な管理をおこたるとサーバーの安定性や性能が低下し、配信品質に悪影響を及ぼすこともあります。また、ストリーミング技術は急速に進化しており、新しいコーデックや配信プロトコルに対応するためには、定期的なアップグレードが必要となります。24時間365日の安定運用を目指す場合、監視体制の構築や緊急時の対応策も考慮しなければならないため、運用の負担は更に増加します。
ImageFlux Live Streamingについて
ストリーミングサーバーの導入・運用において、最も大きな課題となるのは専門的な技術・スキルを持つ人材の確保です。しかし、ImageFlux Live Streamingを利用すれば、この課題を解決できます。
ImageFlux Live Streamingは、高度な構築・運用の知識がなくても、高品質なライブ配信システムを手軽に構築できるマネージドサービスです。お客さま独自のライブ配信システムをAPI/SDKを利用して素早く手軽に構築でき、HLSからWebRTCまで幅広い配信方式に対応しています。
配信に必要なストリーミングサーバーの構築や運用が不要で、サービスのスケーリングや急なアクセス増にも対応可能です。専門人材の確保や運用保守にかかるコストを大幅に削減できる点も魅力的といえるでしょう。
まとめ
ストリーミングは、動画や音声をリアルタイムで配信する技術であり、現代のデジタルコンテンツ消費に欠かせない存在です。しかし、その導入や運用には高度な専門知識と多額のコストが必要です。これらの課題を解決する選択肢として、ImageFlux Live Streamingのようなマネージドサービスがあります。このようなサービスを利用することで、専門知識がなくても高品質なストリーミング配信を実現でき、コストと労力を大幅に削減できるでしょう。
ImageFluxチーム
さくらインターネットとピクシブで共同開発・提供している、クラウド画像変換サービス・ライブ配信エンジンサービス「ImageFlux」のチームです。