Webサイトの表示速度が遅いと感じたことはありませんでしょうか。原因の一つが「レイテンシー」かもしれません。本記事では、レイテンシーとは何か、どのような影響があるのか、どうすれば改善できるのかを詳しく解説します。

レイテンシーとは

レイテンシーとは、データ転送における指標のひとつで、データの移動にともなう遅延や待ち時間を指します。データ移動の遅延は、ネットワーク通信やコンピューターシステムの処理において発生し、ユーザーの操作から結果が表示されるまでの時間差としてあらわれます。

たとえば、動画や音楽のストリーミングで映像や音声が途切れたり、オンラインゲームでボタンを押してから画面上のアクションまでにタイムラグが生じたり、Webページの表示速度が遅くなったりする場合があります。これらはレイテンシーの影響が原因と考えられます。
レイテンシーが低いというのは遅延が少ない理想的な状態を指し、レイテンシーが高いというのは遅延が多く発生している問題のある状態を意味します。

レイテンシーがもたらすリスク

レイテンシーが高い状況では、ユーザー体験が著しく低下します。単にサービスへの信頼を損なうだけでなく、より深刻な問題につながる可能性があります。ユーザーはストレスを感じ、サイトやアプリケーションの利用を控えるようになり、結果として利用者数の減少や収益の低下を招くケースも少なくありません。とくに、eコマースサイト(インターネット上で商品やサービスを売買するサイト)では、ページの読み込みが遅いとショッピングカートの放棄率が上昇し、直接的な売上減少につながります。

レイテンシーを大きくする原因

データのレイテンシーはさまざまな要因によって大きくなります。
考えられる主な原因は以下のとおりです。

  • 物理的な要因
  • ハードウェア
  • ソフトウェア
  • ネットワーク
  • インフラストラクチャ

それぞれ解説します。

物理的な要因

物理的な距離や伝送媒体がレイテンシーの主要な原因の1つです。データが長距離を移動する必要がある場合、物理的な距離に応じて遅延が生じかねません。たとえば、海底ケーブルをつうじて大陸間でデータをやり取りする場合、光の速度による制限があるため、必然的にある程度の遅延が発生します。
使用する伝送媒体の種類によっても遅延の程度が変わります。光ファイバーは高速ですが、古い銅線ケーブルや衛星通信ではより大きな遅延が生じる可能性が高まるでしょう。

ハードウェア

ハードウェアの性能もレイテンシーに大きな影響を与える要因です。ストレージデバイスの読み書き速度、プロセッサの処理速度、ネットワーク機器の性能などが関係します。

たとえば、従来のHDDよりも高速なSSDを使用すると、データの読み書きに関するレイテンシーを大幅に削減できます。高性能なCPUやGPUをうまく活用できれば、データ処理に関する遅延を減らせるでしょう。
また、ネットワーク機器の性能も重要であり、高速なルーターや中継機の使用で、データの転送速度を向上させレイテンシーを軽減できます。

ソフトウェア

アプリケーションの設計やオペレーティングシステムの性能もレイテンシーの原因となります。非効率なコード、過度に複雑なアルゴリズム、不適切なメモリ管理などがソフトウェアレベルでのレイテンシーの発生へとつながる場合も少なくありません。

たとえば、データベースへの頻繁なアクセスや大量のデータ処理を必要とするアプリケーションでは、適切に最適化がおこなわれていないとレイテンシーが増大する可能性が高まります。オペレーティングシステムのタスクスケジューリングや割り込み処理の効率性も、全体的なシステムのレイテンシーに影響を与えます。

ネットワーク

ネットワーク関連の要因も重要です。データトラフィックの混雑、利用可能な帯域幅の制限、同時接続数の増加などがレイテンシーを大きくする主な原因です。

ネットワークが混雑している場合、データパケットの転送に遅延が生じ、全体的なレイテンシーが増加します。帯域幅が不足している場合、大量のデータを転送する際に遅延が発生します。

同時接続数が増加すると、ネットワーク機器やサーバーの処理能力に負荷がかかり、レイテンシーが増大する可能性が高まるでしょう。

インフラストラクチャ

インフラストラクチャ(データセンターの配置や電気通信の設備など)もレイテンシーに影響を与えます。ユーザーから物理的に遠い場所にデータセンターが配置されている場合、データの往復に時間がかかり、レイテンシーが増加します。

クラウドサービスを利用する場合、サービスプロバイダーのインフラストラクチャの設計や性能がレイテンシーに直接影響しかねません。たとえば、適切に分散配置されたエッジサーバーを持つCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)では、ユーザーに近い場所からコンテンツを配信できるため、レイテンシーの軽減が期待できます。

レイテンシーを改善する4つの方法

レイテンシーを改善するためには、さまざまなアプローチがあります。
おもな方法は以下の4つです。

  • ネットワークの最適化する
  • キャッシュを利用する
  • ハードウェアをアップグレードする
  • ソフトウェアを最適化する

それぞれ解説します。

ネットワークの最適化

ネットワークの最適化は、レイテンシー改善の重要な手段です。具体的には、帯域幅の増加、品質サービス(QoS)の設定、ルーティングの最適化などがあげられます。帯域幅を増やすと、より多くのデータを同時に転送できるようになり、混雑による遅延を軽減できます。QoSを適切な設定の目的は、重要なトラフィックに優先順位を付け、クリティカルなデータの遅延を最小限に抑えることです。

また、ルーティングの最適化は、データがネットワーク上を移動する際の経路を効率化し、全体的な遅延を減らします。
ネットワークの最適化により、データの転送速度が向上し、エンドユーザーが体感するレイテンシーが軽減されるでしょう。ただし、ネットワークの最適化をおこなう際は、セキュリティへの影響や、ほかのネットワークサービスとの干渉に注意する必要がある点を理解しておきましょう。

キャッシュを利用する

キャッシュの利用は、レイテンシーを大幅に削減する効果的な方法です。おもな手法としては、CDNの利用やアプリケーションレベルでのキャッシュの実装があります。

CDNを利用すれば、ユーザーにより近い場所からコンテンツを配信でき、データの転送距離を短縮してレイテンシーを軽減できます。アプリケーションキャッシュ(高速にアクセスできる一時的なデータストレージエリア)を実装できれば、頻繁にアクセスされるデータをメモリ上に保持し、データベースへのアクセスやディスクI/O(ディスク入出力:ハードディスへのデータの読み書き)を減らせます。
キャッシュの利用をとおして、データの取得や処理にかかる時間を大幅に短縮し、ユーザーの体感するレスポンス時間を改善できるでしょう。

画像CDNの紹介

画像CDNは、画像に特化したCDNサービスです。Webサイトやアプリケーションで使用される画像を最適化し、効率的に配信する役割を果たします。

画像はWebサイトの大きな部分を占めるため、画像の読み込み速度がレイテンシーに大きく影響します。画像CDNを導入すれば、通信速度に関する問題を効果的に解決できるでしょう。

画像CDNのおもな仕組みは以下のとおりです。

  • 画像のキャッシュ配信:キャッシュ設定がされている場合、オリジンサーバーに代わってコンテンツを画像を配信し、迅速にコンテンツを提供します。
  • 画像コンテンツ最適化:画像の品質を維持しながらリサイズやフォーマット変換をおこない、画像を最適化して容量の圧縮や表示速度を短縮します。

画像CDNの活用は、レイテンシーの削減以外にも以下のようなメリットがあります。

  • 画像の品質を維持しながらサイズを圧縮できるため、ユーザー体験を損なわずにパフォーマンスを向上できます。
  • キャッシュ機能を活用すると、オリジンサーバーの負荷を軽減し、全体的なシステムの安定性を向上させられます。
  • 自動的な画像最適化により、開発者やデザイナーの作業負担を軽減できます。

さくらインターネットがピクシブ社と共同開発したImageFluxは、クラウド型の画像変換・キャッシュ配信サービスです。ご利用中のオリジンサーバー(画像のサーバー)は変更不要で、ImageFluxから発行される画像変換用URLに、パラメータを追加するだけで画像の最適化・配信が可能です。
画像CDNの導入にご興味がある方は、以下のボタンから詳細をご覧ください。

ハードウェアをアップグレードする

ハードウェアのアップグレードは、レイテンシーを直接的に改善する効果的な方法です。具体的には、高速なSSDへのストレージの更新、より高性能なCPUやGPUを搭載したサーバーへの移行、高速なネットワーク機器(ルーター、スイッチなど)への更新などがあげられます。
アップグレードにより、データの読み書き速度の向上や処理能力が増大し、ネットワークのスループット(一定時間あたりに転送できるデータ量)が改善されます。結果として、システム全体のレスポンス時間の短縮が期待できるでしょう。

ただし、ハードウェアのアップグレードには多くの場合、相当なコストがかかります。新しいハードウェアとの互換性や、既存のソフトウェアとの最適な連携を確保するために、十分な計画と検証が必要です。

ソフトウェアを最適化する

ソフトウェアの最適化も、レイテンシーを改善させます。具体的には、アプリケーションコードの最適化やデータベースの効率化などです。
コードの最適化では、非効率なアルゴリズムの改善、不要なループの削減、メモリ管理の効率化などをおこないます。データベースの最適化では、クエリの効率化、インデックスの適切な設定、キャッシュの活用などを実施します。
ソフトウェアの最適化することで、実行速度が向上し、データの処理時間が短縮され、アプリケーション全体のレスポンス時間が改善へとつながるでしょう。
ソフトウェアの最適化をおこなう際は、機能の正確性や安定性を損なわないよう注意してください。

まとめ

レイテンシーとは、データの移動や処理にともなう遅延時間を指し、ユーザー体験に大きな影響を与えます。原因は物理的要因、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、インフラストラクチャなど多岐にわたります。レイテンシーを改善するには、ネットワークの最適化、キャッシュの利用(とくに画像CDNの導入)、ハードウェアのアップグレード、ソフトウェアの最適化などが効果的です。
本記事を参考に、適切な対策を組み合わせて、インターネットをうまく活用していきましょう。

構成・執筆・編集

ImageFluxチーム

さくらインターネットとピクシブで共同開発・提供している、クラウド画像変換サービス・ライブ配信エンジンサービス「ImageFlux」のチームです。

2024年10月31日公開

まずは体験してください。
すべての機能をお試しいただけます。

※サービスの詳細・お申し込みは、各サービスページをご確認ください。